「中国陶磁 美を鑑るこころ」展


12/10(日)まで東京メトロ南北線六本木一丁目の泉屋博古館分館で開催中。問い合わせは03−5777−8600
http://www.sen-oku.or.jp/tokyo/

 展示作品は66件とそう多くはありませんが、珠玉の名品ぞろい。接する機会の少ない、コレクター秘蔵の品々を集めた、まことに見応えある内容です。茶道具に代表される用の器としての受容とは別に、陶磁器を純粋な美の対象と捕らえる鑑賞スタイルが日本で始まって約100年。収集家や鑑賞家、それを支えた美術商らの優れた美意識が、この展覧会の隠れたテーマと言えるでしょう。

 冒頭に陳列されているのが、商代(紀元前14−11世紀)の白陶雷文壷の陶片(残高17.5cm)。東京・京橋の古美術繭山龍泉堂の創業者繭山松太郎(1882−1935)が、大正10(1921)年に北京で仕入れて持ち帰り、荷解き中に店を訪れた東京美術学校(現在の東京芸大)校長正木直彦(1862−1940)が、購入を即決したとされています。青銅器を模した造形は力強く、恐らく祭器の類でしょう。鑑賞陶器の黎明期を彩るに相応しい品です。ほとんど公開されないまま、長く東京芸大の倉庫に眠っていたそうです。

 重要美術品 三彩貼花文鳳首水注(高37.7cm)は唐三彩の優品。透明な鉛釉を全体に掛けたあと、ところどころに緑釉と褐釉を置き、焼成時の熱で流れ落ちるに任せています。薄い釉の淡い発色と、端正な器形が調和した気品溢れる作。昭和12(1937)年に松太郎の長男繭山順吉(1913−99)が北京で購入。小山冨士夫(1900−75)監修による昭和35(1960)年4月、日本橋・高島屋での中国名陶百選展で紹介されて以来の出品だそうです。神戸の白鶴美術館に類品があります。

 南宋官窯の青磁洗(口径19.7cm)は、初めての公開。昨年11月にシュツットガルト・ナーゲルのオークションで落札され、日本もたらされました。青磁の発色はブルーもしくはグリーンが普通ですが、焼成時に窯が酸化状態になると茶色を帯びる場合があり、これらは米色(べいしょく)青磁と呼ばれます。この洗の一部に青みが残っており、口縁部には焼いた際に出来たと考えられる亀裂があります。たましん歴史・美術館の中澤富士雄副館長は、「意図的に米色をねらったのではなく、偶然の産物と思われますが、それなりの美しさがあり、何らかの事情で後世に伝わったのでしょう。貫入(かんにゅう)や器形などから、官窯製品と判断して間違いないでしょう」と語っています。

 小品ながら愛らしい趣の五彩花鳥文壷(高9.2cm)は、大明万暦年製(1573−1620)銘のある景徳鎮窯の製品です。大和文華館の矢代幸雄館長(1890−1975)が昭和20年代に繭山龍泉堂の店頭で目にして購入を決めたそうです。古くから日本に伝わったと思われますが、詳しい来歴は不詳。

 乾隆年製(1735−95)の粉彩上絵銘がある重要美術品 琺瑯彩西洋人物文連瓶(通高21.7cm)は、日本にある清朝陶磁の白眉と言うべき名品です。中澤副館長によると、絵柄はギリシャ神話のパリスによるアテナ、ヘラ、アフロディテの美貌比べの審判の模様で、油絵の原画を写した可能性が高いそうです。恐らく昭和初年に山中商会の手で中国から請来され、日本橋・壷中居の広田不孤斎(1897−1973)の勧めに応じて細川護立(1833−1970)が買い取った可能性が高いと考えられます。しかし記録上は未確認で、解明が待たれます。

 滅多に見られない品を中心に紹介してきましたが、ほかにも優れた品々が数多く展示されています。静嘉堂文庫美術館の青磁鳳凰唐草文枕(耀州窯、北宋)、イセ文化基金の白地黒掻落し牡丹唐草文梅瓶(磁州窯、北宋)、東京国立博物館の重要文化財青磁輪花鉢(南宋官窯)や大阪市立東洋陶磁美術館の青花花鳥文水注(明・永楽年間)などはその代表。ほかにも川端康成旧蔵の青磁盤(汝官窯、北宋)や青磁鉢(龍泉窯、南宋)、梅原龍三郎が愛蔵し、自作にも描いた五彩龍鳳文六角瓶(景徳鎮窯、明・万暦年間)など、話題性ある品も含まれています。展覧会の実現に協力した繭山龍泉堂の川島公之さんは「これらを選んだ収集家たちの、高い美意識に注目していただければ」と話しています。

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